線香出荷風景のはなし
昭和30年代の線香出荷風景
まずはこの写真をご覧ください。何の写真だか分かりますか?
正解は、昭和30年ごろの線香出荷風景の写真です。写真からは分かりづらいかもしれませんが、この写真の手前に船が停泊しており、板桟橋を渡って船に木箱に詰めたお線香を積んでいたそうです。(写真は船側から撮影されたものだと思われます。)
かつて、淡路島の西浦海岸の主要港であった「江井港」は、空から見ると長靴のような形状をしており、嵐や高波に強く、台風の際などには近隣の漁船等が避難港として停泊するほどの天然の良港でした。昭和30年ごろには、この「江井港」から鹿児島や九州の主要拠点に向け、船でお線香を出荷していたのです。
ちなみに、昭和30年(1955年)ごろといえば、日本経済は神武景気を迎え、昭和31年の経済白書に「もはや戦後ではない」と記されたのは有名な話です。また、昭和30年はトヨタがクラウンを発売した頃です。当時、自動車はまだまだ高級品でしたが、好景気にも後押しされ、以降、爆発的に普及していきます。
そして、日本の物流はトラック便などの陸上運輸が主流となり、現在に至ります。
たった1枚の線香出荷風景の写真ですが、当時を懐かしむだけでなく、日本の物流システムの変遷なども感じることのできる面白い1枚だと思います。
なお、下記は現在の江井港の写真です。立派な堤防が築かれ、今も漁船などが停泊しています。