お線香の使い途のはなし
お線香の使い方
お線香は仏事で使用するだけでなく、癒しやアロマテラピーを目的としてご使用いただくこともあります。
また、お線香はお客様のおもてなしなどにもお使いいただくことができます。今でも玄関や客間に香炉を置き、お客様をステキな香りでお迎えする「お迎え香」という習わしがあります。
廊下や客室などでお線香が焚かれている日本旅館も多くあり、このような旅館では、香炉が目に見える場所ではなく目立たない場所に置かれ、お客様に気づかせないような細かな気配りがなされているケースもあります。
お手洗いなどでお線香やお香を焚いている料亭や飲食店などもあります。お洒落な雰囲気を演出するとともに、これもまた、香りによるお客様への気配りの一つです。
お線香が時計代わりに
さて、お線香は上記のような使い方だけではなく、江戸時代には時計代わりにお線香を使って時間を計ることもありました。
季節や天気の状態、原料などによって多少の差異はありますが、お線香が火を点けてから燃え尽きるまでの時間はだいたい同じであるため、「1本で40分」というように時間を計ることができたのです。(当時の一般的なお線香の長さは5寸(約15cm)で、燃焼時間は約40分でした。)
江戸時代に作られた古典落語には、「たちぎれ線香」という演目があり、まさにお線香が時を計る道具として登場します。ちなみに「たちぎれ線香」は、上方では三代目桂米朝ら米朝一門や五代目桂文枝が主な演者で、その三代目桂米朝曰く、「今でこそ中堅の落語家がこの噺に挑戦することも多くなっているが、以前は「大師匠」の格でないと高座にかけることを許されなかった」というほど、難しい演目だそうです。
一部余談になってしまいましたが、お線香は時代が変われども、日本人の暮らしの中に定着している伝統品であるとともに、現代生活に欠かせないものとなっています。