香木・香料のはなし -大茴香-
大茴香
香木・香料のはなしの第四回目のテーマは「大茴香(だいういきょう)」です。
中国原産のシキミ科(モクレン科)の常緑高木である「トウシキミ」の果実を乾燥させたものが、大茴香です。八つの角を持つ星形をしており、スターアニスや八角などとも呼ばれます。主に中国南部、南部インド、インドシナ北部で生産されています。
※画像は(株)長川仁三郎商店からご提供いただきました。
大茴香の香りは清涼感のある爽やかな甘味で、香りの深みを増すような働きがあります。中国では、古くから中華料理において、豚の角煮などの煮込み料理やデザートの香り付けに使われてきました。分かりやすいところでは、杏仁豆腐の香りが大茴香の香りです。中国の代表的な混合香辛料である「五香粉(ウーシャンフェン)」の材料の一つとしても使われています。(大茴香のほか、桂皮・丁子・花椒・小茴香・陳皮などが五香粉の材料となります。)
漢方薬としても用いられ、食欲増進、精神安定、虫除け、胃を丈夫にし、消化を助ける効能があると言われています。なお、トウシキミと近縁のシキミ科のシキミの果実も似たような形状をしていますが、こちらは猛毒です。仏事用として寺院などで見かけることもありますが、間違っても口にしないでください。
さて、大茴香はかつて、インフルエンザ治療薬のタミフルの原料であることが話題になりました。確かに、大茴香に含まれるシキミ酸がタミフルの合成原料として用いられています。ただ、タミフルの生産では、シキミ酸を原料に複数回の化学反応を経る必要があり、大茴香をそのまま食べてもインフルエンザには効果はありません。