香木・香料のはなし -藿香-
藿香
香木・香料のはなしの第九回目のテーマは「藿香(かっこう)」です。
藿香は、「広藿香」と「土藿香」の二種類があります。
「広藿香」は、熱帯アジアのインドネシアやフィリピンが原産で、インドネシアやインド、中国の広東省・雲南省などで産出されるシソ科の多年草であるパチュリ(またはパチョリ)の葉や茎を乾燥させたものです。産出地の広東省に由来して、「広藿香」と呼ばれます。
これに対し、日本を含め東アジアに広く分布するシソ科の多年草、カワミドリの葉や茎を乾燥させたものを「土藿香」(または「川藿香」など)と呼びます。
どちらもよい香りを放ちますが、「広藿香」と「土藿香」とでは含有する成分が異なっています。なぜどちらも「藿香」と称されるのかというと、原材料のパチュリが南方の熱帯地域でしか栽培できず、北方でも栽培できる類似のカワミドリで代用したためだと考えられます。現在では、一般的に藿香というと「広藿香」を指すことが多いように思われます。
※画像は(株)長川仁三郎商店からご提供いただきました。
藿香の香りはウッディかつ東洋的で、優しく上品さを感じさせる香りです。「広藿香」の原材料でもあるパチュリは、1960年代にサイケデリックやフラワームーブメントを象徴する香りとして、白檀やジャスミンと並んで世界中で大流行しました。
香りには、興奮した神経を鎮静させる作用があり、ストレスによる神経疲労を和らげる効果があるといわれています。漢方薬としても、下痢や制吐剤、解熱剤として利用されています。
また、揮発しにくい性質から、香りを長く留めるための保留材や他の香りを引き出すのに優れており、お線香づくりでも重宝されています。