香木・香料のはなし -安息香-
安息香
香木・香料のはなしの第七回目のテーマは「安息香(あんそくこう)」です。
安息香(あんそくこう)は、東南アジア原産で熱帯雨林に育つ高木である、エゴイノキ科のアンソクコウノキから採取されます。木はもともと樹脂を含みませんが、樹皮に切り込みを入れて傷付けると自らを保護するために黄赤色の樹脂がにじみ出ます。その樹脂を固めたものが安息香です。
英名では「ベンゾイン(benzoin)」と呼ばれます。
安息香には、タイ・ラオス・ベトナムなどを主な産地とする「シャム安息香」と、インドネシア・マレーシアを主な産地とする「スマトラ安息香」とがあります。実際のところ、「シャム安息香」と「スマトラ安息香」とでは産出する樹木の種に違いがあるため、このように区別されています。
※画像は(株)長川仁三郎商店からご提供いただきました。
安息香という名前の由来にはいくつかの説があります。パルティア(カスピ海南東部・イラン高原東北部に興った王国・遊牧国家、漢名で『安息』)で用いられていた香りと安息香の香りが似ていたのでこの名がついたという説、中国の明の時代に記された『本草綱目』に様々な病や風邪を安息させる効能があることから名づけられたとする説、また、痰の排出を促進する作用があり、息を安ずることから安息香と名づけられたという説です。
安息香という名のとおり、呼吸を落ち着かせ安心させるバニラのような香りで、西洋では古くから宗教儀式などでも用いられてきました。香りには、幸福感を与え、悲しみ・抑うつを和らげる効果があると言われています。
また、香りを長く留めるための保留剤としても使われます。お香の分野でも、メインの香りとしてではなく保留剤として用いられることが多いように思われます。