香時計のはなし
香時計(時香盤)
以前、「お線香の使い途のはなし」の中で、江戸時代にお線香を使って時間を計っていたことを紹介しました。ただ、それよりもずっと昔から、時間を計るためにお香が使われ、お香の燃えつきた長さをみて時の経過を測っていたと言われています。お香の燃焼速度はかなり安定しており、このようなお香を使った時計のことを「香時計(時香盤ともいわれる)」といいます。
香時計は、古くは6世紀頃の中国で使われ、日本に伝来した当時のものが正倉院に残されているそうです。また、正倉院の香時計には古代インドの文字が刻まれていることから、インドで作られたものが中国を経て、日本に伝わったと考えられています。飛鳥~平安時代には、朝廷で時間の計測を司っていた「陰陽寮」から発せられる鐘の音を基準に、都にある寺院が香時計に点火して時間を測り、それを基に寺院が鐘を鳴らして時間を庶民に伝えていたのではないか、と言われています。
では、香時計とは一体どのような物なのでしょうか? 下図は江戸時代に使われていた香時計のイメージです。
均した灰の上に帯状した抹香(細かい粉末のお香)を敷き、抹香に点火してその燃焼している位置で時間を測ります。香時計には、抹香を敷くための木型が用意されていて、灰の上に木型を置き、木型の溝にそって抹香を入れて木型を外します。そうすると、抹香の回路が出来上がります。この回路に点火して時間を測るのですが、回路の途中にオモリをつけた糸をかけ、糸が焼き切れるとオモリが落ちて時間を知らせたり、途中で抹香の香りを変えたりなどして、時間の経過が分かるようにすることもあったようです。
なお、上記は「香時計」の一種で、お線香を使った「線香時計」の仕組みです。「香時計」と同様、お線香が燃えつきた長さをみて時の経過を測るものですが、途中にオモリをつけた糸をかけ、糸が焼き切れるとオモリが落ちて鐘が鳴るようになっています。
現代社会は何かと時間に追われがちですが、香りとともに時間を知るというのもなかなか洒落たものかもしれませんね。