日本のお墓の起源のはなし
日本のお墓の起源
今回は、お線香とも深い関わりのある「お墓」について、その日本における起源に関するお話です。
日本のお墓の起源は、古事記に出てくる「千引石(ちびきいわ)」だという説があります。
伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)は、国生みを終えた後、次々に神を生みました。ありとあらゆる神を生んだものの、火の神を生んだことが原因で、伊弉冉尊は黄泉の国(地下にある死者の世界)へと旅立ってしまいます。
もう一度、伊弉冉尊に会いたいという思いを抑えきれなくなった伊弉諾尊は、黄泉の国へ降りることを決意します。しかし、黄泉の国は生きた者が来ることを禁じている死者の国。そこで、伊弉諾尊は伊弉冉尊の変わり果てた姿を見てしまうのです。伊弉冉尊は辱めを受けたと嘆き、魔物や千五百もの黄泉の国の軍勢を伊弉諾尊に差し向けます。伊弉諾尊は十拳剣(とかのつるぎ)で追い払いながら、ついに現世と黄泉の国の境界である黄泉比良坂(よもつひらさか)のふもとまで逃げ延びます。
そして、この境界を千引石という巨大な石で塞いでしまうのです。伊弉諾尊と伊弉冉尊はこの千引石をはさんで最後の会話をしました。つまり、千引石には、あの世とこの世を分ける境界としての意味があり、これが墓石の始まりといわれる由縁です。また、このように石をはさんで話しをする光景は、現在のお墓参りにおける故人との対話の原点となったとも言われています。
私たち日本人は、墓石の前でお線香をあげながら手を合わせ、故人とお話しすることで、心の安らぎを得たり、活力を得たりします。もしかしたら、石にはあの世とこの世を繋ぐ力があるという思いが、今も昔も変わらず私たち日本人の心の中で脈々と引き継がれているのかもしれませんね。